Yamazaki Dental Clinic

歯の動揺はなぜ起こるのでしょう

歯の動揺はなぜ起こるのでしょう

 歯周炎の代表的な症状に「歯の動揺」があります。これは患者さん自身が自覚することも多く、来院の動機となる症状の1つでもあります。では、歯の動揺はなぜ起こるのでしょうか? そして臨床上、どのような意義があるのでしょうか?
 健康な歯周組織では、接合上皮の最根尖部あるいはセメントエナメル境から約1~1.5mmの位置に歯槽骨頂が存在します。この場合、歯は支持組織によりしっかりと支えられており、機能的に問題があることはあまりありません。
 しかし実は、このような健康な状態でも歯は動揺しています。なぜなら、歯根と歯槽骨との間には,幅0.25mm±50%の歯根膜という組織が存在しているからです。この歯根膜の主成分であるコラーゲン線維の両端が固有歯槽骨とセメント質に入り込むことで歯と歯槽骨をつなげていますが、この歯根膜は軟組織なので、歯根膜の幅の分、歯は微妙に動揺するわけです。これが一般的に「生理的動揺」といわれるものです(表,図1)。生理的動揺は、一般的には前歯のほうが歯根が1本で細いため、大臼歯より大きいといわれています。


 歯の動揺の原因はさまざまです。たとえば、プラークに起因する歯周炎の進行による骨吸収が起こったらどうなるでしょう? その程度が軽度なら、歯の動揺度はそれほど変わらないかもしれません。しかし、歯周炎が高度に進行して、付着の喪失量が多くなると、歯の動揺度が増すことが多くなります。つまり、歯根膜腔の幅は同じであっても、歯を支える組織の高さが減ることで、歯の動揺の支点が根尖側方向に移動し、動揺度が増大するわけです。これが歯周炎による歯の動揺のメカニズムです(図2)。


 歯が動揺するもう1つの原因は、病的(噛みしめや歯ぎしり)な咬合力(=噛む力)です。これは、いわゆる「咬合性外傷」とよばれる状態で、特に強い側方圧が歯に加わった場合に生じます(図3)。また、臨床的には、片方の側に力が加わったら反対方向からも力が加わることが多いと考えられます。これを「ジグリング型外傷」といいます。このような力が歯に加わると、歯は力から逃げようとして、歯根膜腔の幅を広げ、歯は動揺します。このように歯根膜腔の幅が広がりつづけているのは病的な状態ですので、咬合調整などの処置が必要となります。場合によっては、歯周炎と咬合性外傷が混在して動揺が生じることもあります。
 また、歯肉の炎症の状態によっても歯に動揺が生じます。歯肉にも歯を支える役割があるため、支持組織の高さや歯根膜腔の幅が同じでも、歯肉に炎症がある場合はない場合と比較して動揺が大きくなるのです(図4)。そのほか、歯の破折や根尖性歯周炎などでも動揺は生じます。


 歯周炎によって歯が動揺している場合、骨吸収が起こっているはずなので、まずはX線写真である程度確認することができます(図a)。加えて、歯肉の炎症状態をブローピンク時の出血の有無で確認します。この場合の治療方針は、ブラッシング指導、歯肉縁下スケーリング・ルートプレーニングを主体とした歯周病治療です。これがうまくいくと、出血は消失し、歯の動揺が小さくなる場合があります。
 では、出血が消失したにもかかわらず歯の動揺が残った場合はどうすればよいのでしょう?答えの1つは固定することです。しかし、動揺があっでも患者さんが機能的に問題ないならば固定する必要はありません。逆にいうと、固定をすれば見かけ上の歯の動揺は治まりますが、それだけで治療を終わらせてはいけないということです。
 注意しなければならないのは、限局した歯面のみで骨吸収がある場合や、ブリッジの支台となっていたり、固定装置が入っている場合、歯周炎が進んでいても臨床的に動揺がみられない場合があることです(図b)。この場合ももちろん歯周治療は必要です。また、X線写真上で歯根膜腔が拡大し(図C)、明らかな早期接触や咬頭干渉があり、それに伴う歯の動揺が進行的に増加している場合は、咬合性外傷が疑われるため、咬合調整などが必要になります。このように 動揺の原因はさまざまなので、それぞれに応じた対応が求められています。